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無題

「青春をもう一度、ねえ」

かつての話。
世界は常識という表記化されない法に縛られていた。
それは「宗教」であったかもしれないし、仲間内の「空気」であったかもしれないし、
表記上のお約束(プロトコル)であったかもしれない

その中でも実際に世界そのものに対する干渉力を持った存在―世界結界と呼ばれたそれ―は、
「世界とはかくあるものである」という無数の定義によって作られた科学の発展によって、
科学の意図する方向とは逆に力を削られ、
光速にまで達した情報の伝播速度に乗ってより速度を増し、
隙を突くように常識外の手段を行使するものたちによって大きく弱まりだし、
瓦解するように力を失った。

純粋な科学の産物である電算機器はその中で否定されて動作する理論を見失い、
殆どの理論は建て直しを余儀なくされた。

そうして全てが打ち壊されても、百年たらずで(産業革命が世界を作り変えたように)全てが新しく作り変えられた。
そんな「こうなったかもしれないもう一つの未来」。


そこで自分たちの未来を演じ・・・いや、事態はもう少し複雑さを有することになる。

百を越えて尚生きながらえ、革命を越えて尚過去を懐かしむ老人たちの手によって。

「やあ、ほら、私は安寧を崩されるのが大嫌いだったんだよ。
 実際習ったことが無価値に帰すのは嫌だったし、世界そのものが変質することはもっと避けたかった。
 ただ、私もその世界そのものの変質に加担する能力の使い手であったことは否定はせんがね・・・。
 それでも、もう一度、もう一度昔に戻りたいと願ったんだ。あの、"時の境目"にね。
 そうして形振り構わぬ祈りとして出来うる限りの手段を講じた。
 文明が持ち直して更なる高みへと押し上げられるのに加担したのも間違いなくそのために過ぎない。
 ただ、あとは"彼"が何年、何十年、何千年眠っていてくれるか・・・。」

懐古するものどもは、神に愛されたる人間らしい傲慢さと、持ちうる限りの手段を以って、
《臥竜》と名付けられた、
病み臥せった長命の回帰者(過去の語を借りれば来訪者と呼ぶべきかもしれない)の夢を大きく改変し、
まごうことなく2000年代最初期の現実を再現した。

そんな、シルバーレイン《銀の雨の降る世界》の、SR《シミュレーテッドリアリティ》

そこは人の夢を追われた悪夢の担い手たちの最後の楽園であり
過去を懐かしむ人間どもの見果てぬ夢であり
迫害を受け苦しみを受けて葬られた仲間の墓所であり
そこに新たに生まれた者たちのかけがえのない世界であり
「こうなったかもしれない」未来への、二度目の分岐点。

「さあ、"死と隣り合わせの青春"をもう一度。」

SR^2《シルバーレイン・スクエア》、イグニッション!





という妄想を朝五時くらいにしました。
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