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付け合せのパセリまで綺麗に食べ終えた少年に少女は尋ねた。


「貴方に嫌いなものってあるの?」

「あえて言うなら"The number you have reached is not in service at this time~"云々言う文句でしょうか。正直トラウマですのであまり聞きたくないです。」

「ああ、アメリカとかで電話番号間違うと聞けるわね。」

「組織が潰れた時に緊急連絡先に掛けたらそれでしてね。」

「そこまでショックだった?そりゃ、親しかった子と離れ離れになって大変だとは思うけど。そもそも、前々から分かっていたことだわ。」

「ようは、"帰る場所が消えた"って言うのがショックだったんです。そうなった時は初夏のヴァージニア州でしたっけ。貴方と別々に仕事をしてた日で。その頃には組織自体が不味い不味いって言われてて、それでも半年は持ちましたっけ。」

「私は私でエカテリンブルクから散々シベリア鉄道をキセルして、漸くウラジオストクから船で逃げたっけ。アンタと違って隠密行動苦手だし、寒いの嫌いなのに。未だに魚の臭いだけでうんざり。」

「寒いですしね、あのあたり。僕は飛行機でしたよ。日本行きを勧めてくれる奇特な方がいらっしゃいまして。勿論、僕、パスポート持ってないんでカーゴにのっていったんですが。それでも空港まで乗せてもらいました。」

「誰よ、それ。」

「僕にも皆目。ただ、紅い靴を履いていたことだけは覚えてます。」

「紅い靴、ねえ。」

「お話しましたっけ。」

「何をよ。」

「少し精神とか調整されてますよね、僕たち。仕事用に。」

「私はされてないわよ。あんたたちラボものだけじゃないの?私はホイホイさらわれてきただけ。人に見えないものが見えただけで運のツキよ。」

「まあ、ええ、詳しいことは分かりかねますが。ある程度精神を弄られてるんです。適切な道具になるために。その心理療法士の遊びの一つで、僕に明示されている部分が一つありまして。」

「あんまり気持ちのいいもんじゃないわね。で、何。」

「"お嬢さん、もしあなたに/うるさくつきまとう男がいたら/青をこころに/一、二と数え/赤いくつをさがしてごらん……"と。」

「あんたはお嬢さんじゃないじゃない。」

「ええ、でも僕はシサンですから。」

「はっきり説明して頂戴。」

「この一節が出る話に出てくる登場……人物としていいものでしょうか。とりあえず人格がありまして。少女を救うためだけに生まれてきたといいましょうか。」

「へえ。で、それがどうかかわるの?」

「目の前で浚われた女の子が、たまたま紅い靴を落としまして。そして空が青かった。それだけですよ。」

「そんな理由で人助け?変な話ね。」

「もう一つ言うなら、僕を見ていました。大変でしたよ。イグニッションカードがない時でしたから、自分に血痕を残すとその時点でアウトですし。」

「殺したのね。」

「いえ、手の甲に穴を開けただけです。それで引き下がっていただけました。」

「それで、そのお嬢さんを自分の立場も省みず助けたわけね。」

「ええ、馬鹿馬鹿しいのかもしれませんが。そういう風に作られてますから。」

「悲しい話ね。で、そのシサン君はどうやって空港までいったのよ。カージャック?」

「女の子がご両親に相談してくれましてね。僕が見える外界では稀有な女の子でしたよ。それで、日本の銀誓館を紹介してもらってこちらへ。ゲートを抜けてロビーででうろうろしてたらここの関係者にとっ捕まって、常識について色々教え込まれてよく分からないうちに在籍してました。夏ごろでしたっけ。」

「えらく適当ねえ。」

「自分でも思います。いつの間にかにもほどがあるって。これもめぐり合わせでしょう。でも、本当のところ貴方もそんな調子だったんじゃないでしょうか。ねえ、ミズ・アラルディ。」
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